VR映像で認知症・看取りのオンライン疑似体験を実施しました
映像体験で新たな気づきを
介護についての理解と認識を深め、介護従事者、介護サービス利用者及び介護家族を支援するとともに、利用者、家族、介護従事者、それらを取り巻く地域社会における支え合いや交流を促進することを目的とする「介護の日」。今年はオンラインで、認知症や看取りについて、疑似体験できる映像の配信を行いました。
パソコンやスマートフォンなどの画面から認知症の方の目線を体験。また、ご本人へのインタビューや、動画制作協力の株式会社シルバーウッドの担当者さんによるコメントなどもあり、「介護とは?」ということを改めて考えたり、学んだりすることのできるプログラムです。
その内容をご紹介します。
※通常はVR ゴーグルをつけて体験するプログラムですが、今回はより多くの方に見ていただけるよう、ゴーグルは使わずにオンライン上で映像を配信しました。
①私をどうするのですか?
笑顔で「さあ!1、2、3!」と踏み出すことを促す介護職員の方々。しかし足元は高いビルの屋上の縁。そして視線の先ははるか下の道路。一体何が起きているの?という不安な気持ちになってしまう場面から始まる「私をどうするのですか?」という動画。
これは認知症の症状に見られる視空間失認という状況を表現したものです。
実際は外出先から戻ってきた認知症の方を車から降ろすという状況で、職員の方は笑顔で出迎え「さあ降りましょう」と促しているだけなのですが、ご本人にはビルから飛び降りろと言われているように思えたという、実際にあったエピソードなのです。
視空間失認は、距離感がわからなくなったり、空間認識がうまくいかなかったりしてしまい、この場合はわずかな高さがまるでビルの上にいるかのように感じられてしまいました。周囲からすると「なぜ急に降りたくないと頑なになるのか」と不思議な気持ちになりますが、きちんとした理由があるのです。
ではこんなときどうしたら?
まずは認知症の方の話にしっかりと耳を傾けることが大事なのだそう。どうして嫌なのか?何を感じているのか?しっかりと話せば、理由もわかり、捕まるものを用意したり、自分が先に降りて見せたりといろいろな対処が可能になるということです。
実際に目もくらむような高さを映像で見ることで、相手の方に寄り添った対処の必要性などの「気づき」がある動画です。
②レビー小体病 幻視編
2本目はその場にないものが見えたり、動いていないものが動き出したりという幻視の症状をわかりやすく可視化したもの。レビー小体病当事者である樋口直美さん自らが原作・監修しました。
友人宅を訪れると、誰もいないはずのところに人がいたり、いるはずのない犬が歩いていたり。また、風もないのにカーテンが動き出したり、スマートフォンの充電コードが蛇になって動き出したりという奇妙なことがおこっています。友人は「どうしたの?大丈夫ですよ?」と笑顔で落ち着かせようとしてくれていますが、見ていると不安な気持ちになってきたりもします。
こうしたとき、周りの人はどうしたらよいのでしょうか?
「否定されるとつらい気持ちに。そうしたことがストレスとなり症状の悪化にもつながってしまいます。まずは何が見えるの?と、聞いて欲しい」と、樋口さんご自身がインタビューに答えています。「見えるのは恐ろしいものばかりではありません。きれいなものやユニークなものも見えているので、異常視せずに一緒に楽しむ気持ちでいてもらえたら」とのこと。
幻視に限らず、認知症の方とのコミュニケーションの取り方なども学ぶことのできる貴重な映像でした。
③生きとし生けるもの
ある特別養護老人ホームで暮らす竹内多美子さん(103歳)の最期の300日のドキュメンタリー。最期を生き切る多美子さんと、寄り添う家族、伴走する施設職員の様子が明るい笑顔とともに記録されています。
「お寿司が食べたい」「おまんじゅうが食べたい」と言う多美子さんの言葉に耳を傾ける職員、一時帰宅での家族との様子、近づく最期にむけてどう「生きていくのか?」という人としてのテーマを考えさせられる1編です。
職員のミーティングの様子なども収録されており、介護の仕事に就く人にとってはさまざまな学びがある内容でした。
シルバーウッドの大野さんによる「私達より先に認知症になられた先輩方」「命の生存期間を延ばすことはできないが、残された日々に命を吹きこむことはできる」という言葉には、実際に介護職についている方ならではの深みがあり、福祉とは?介護とは?ということを改めて考えてみたくなります。
福祉のしごとを考えるきっかけに
千葉県福祉人材センターでは、毎年介護の日にさまざまなイベントを企画しています。来年も開催を予定していますので、ぜひご参加ください。
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